「お手伝いしましょうか?」セルフレジに不慣れな女性に声をかけたら「悲しく」なった理由

約束の時間に遅れるのは、社会人としてはルール違反だ。それでもやむを得ず遅れて平謝りした経験は誰にでもあるだろう。
一方で今、「見知らぬ誰か」を待たせてしまうことへの恐怖感のようなものが社会にまん延しているのではないだろうか。コンビニやスーパーでのセルフレジなどがその代表かもしれない。
人はそれほど怒ってはいないのに
「私の前でセルフレジを使っていた女性が、あまりにあたふたしているのでスタッフを探したんですが見当たらなかった。それで『お手伝いしましょうか』と声をかけたら、『ごめんなさい、いいです。買うのやめます』って。いや、大丈夫ですよ、慣れればいいだけなんだからと言うと、泣きそうに恐縮してて。それほど年配でもないから、単に慣れていなかっただけだと思うんですが、そこまで萎縮しなくてもいいんじゃないかと思いました。無事にレジを通過したあとも『ごめんなさい、私のせいで。本当に申し訳ない』と平身低頭。助け合えばいいだけなのにとちょっと悲しくなりました」
サツキさん(42歳)はつい先日、スーパーで出くわしたエピソードを話してくれた。セルフレジが増えると共に、こうやって萎縮する人も増加している印象がある。
迷惑をかけることは「悪」だと思い込んでいる
誰もが異常なまでに「人を待たせること=人に迷惑をかけること」として恐れている。これは社会の状況とは無縁ではないだろう。物価高騰に社会情勢の不安、人手不足、さまざまな要因がからまって今、心にゆとりを持って暮らしている人はそう多くはない。誰もがあくせくし、ほんの数分も待てない、だから待たせたら怒られる。人に迷惑をかけることは悪いことだと思い込んでいる。
だが、そもそも社会で生きている人間は、大なり小なり誰かに迷惑をかけながら生きているものだ。意図的なら怒られても仕方がないが、無意識のできごとがちょっとした迷惑になっていることはいくらでもある。そんなときのために「ごめんなさい」という言葉があり、「いいえ、大丈夫ですよ」という言葉があるはずなのだが……。
地方出張でバスに乗ったら
「先日、地方に出張に行ってバスに乗ったら、関東で使えるSuicaが使えなくて。うっかりしていました。焦りまくって現金を探しましたが、なんと1万円札と5000円札しかない。あとから払うタイプのバスで、私のあとにも降りる人が並んでいて、本当に汗が出ました。払ってあげるよと言ってくれる乗客の方もいたし、運転手さんも『次に乗ったときでいいですよ』とまで言ってくれて……。東京だったらこうはいかない、後ろからチッと舌打ちが飛んでくるかもと思いました。結局、運転手さんに名刺を渡しておき、翌日乗った同じバス会社に昨日の分も支払いますと言って払いましたが、本当に焦りましたね」
タカアキさん(45歳)はそう言った。実際に東京で似たような場面において、チッと舌打ちしている人を見たことがあるからと彼は言う。
「僕自身、後ろに降りる人がいる状況で自分がまごまごしてしまったことに焦燥感と羞恥心と罪悪感が入り交じって、けっこうパニクったんですよ。だからとっさのときに慣れていない人や高齢者がパニクるのはよく分かります」
待たせている人が高飛車になるのは論外だ。だが、待たされている人もよほどのことがない限り、相手を責めるような態度をとったり舌打ちしたりするのはいかがなものか。
現金とキャッシュレス
セルフレジでも、現金で払う人に対してキャッシュレス派の人々がストレスを感じるシーンは多いようだ。
ところが、実際にはキャッシュレスだって時間がかかることはあるとケイコさん(49歳)は言う。
「あるスーパーはポイントを加算する場合、セルフレジでは現金しか使えないんですよ。だから当然、財布をごそごそということになる。あるコンビニのセルフレジは、ポイントカードとキャッシュレスが一緒に使える。そうするとポイントカードのアプリを出してから、今度はキャッシュレスのアプリを立ち上げて……と、けっこう時間がかかる。一緒に買い物に行った夫が『店員さんがレジしてくれて現金で払うシステムが一番早いんじゃない?』と苦笑していました。複雑になって店舗によってもいろいろ違うとなると、誰でも戸惑いますよね。もう私は、後ろの人に過敏になるのをやめようと思っています。時間がかかったら、ごめんなさい、と後ろの方に謝りながら逃げる。それしかないなと」
冗談交じりに言ったケイコさんだが、誰もが複雑なシステムに素早く対処できるわけではないのだから、もはや「圧」を感じる必要もないのではないか。にこやかに「ごめんなさい」とすり抜けていけたら、人生もう少し気楽に生きられそうだ。
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